ケンブリッジ大学認定CELTA講師 北山奈美の英語指導とPBL

全ての子どもたちに質の高い英語教育とPBL教育を届けたいという理念で活動をしています。学習効果が確実に表れる英語指導アイディアや今注目のプロジェクト型学習に関する情報を発信します!

学校教育のカギはマインドセットだ!

先日、先進的な英語教育を実践していらっしゃることで有名な一般社団法人オーガニックラーニングの代表理事でいらっしゃる江藤 由布先生とお話させていただきました。

江藤先生はオーガニックラーニングの理事を勤めながら、現役教諭でもいらっしゃるという非常に多方面でご活躍されていらっしゃる方であり、自律的学習者の育成に力を入れていらっしゃいます。

 

今回のお話は、現在準備中のCLIL指導講座の中でご紹介させていただく英語の指導についてお聞きすることが目的だったのですが、話しはもっと大きなところに広がり、教育の本質や今の文科省の訴えている学習指導要領にまとめられている教育観と学校現場の現状などについてお話させていただきました。そこでキーワードとなったのが「マインドセット」だったのです。

教師のマインドセットで理想のクラスを創り出す!

 

色々とお話をさせていただく中で、私も激しく同意したことの一つが教師のマインドセットについて。教師のマインドセットを変えるだけで、教育の質が上がる!ということ。江藤先生はご自身の指導の変換歴をTEAL組織図を用いながらお話してくださいました。

TEAL組織図-あなたはどのタイプ??

 

画像1

 

赤 ‥ 生き残りをかけた弱肉強食的な関係

黄色 ‥ 軍隊式 力でねじ伏せる恐怖政治的な?関係

オレンジ ‥ 機械式な感じ 黄色ほどではないけれど、能力を持つものが統治する関係

グリーン ‥ 価値観を共有し合い、権限を譲位することもある関係

モスグリーン ‥ それぞれが決定権を持ち、高い志を持って存在目的に基づいて行動を起こす関係。この関係では、皆が同じ存在目的を共有しており、課題提起型であり、内容を見直すこともあるという関係。皆が存在目的を共有しているため、壊れにくい構造を持っている。

 

学校は小学校であれば、ほぼオレンジ、中学校からはオレンジを中心とはするものの、黄色、もしくは時々グリーンの関係を持っているという感じが一般的ではないかと思います。

 

私自身振り返った時に、オレンジが中心で時に?黄色があったと思います。皆さんはどうですか?

 

江藤先生は、人生の大事なイベントごとにご自身の指導が変わっていったと分析していらっしゃいました。そして今、グリーンとモスグリーンであると。

 

素晴らしいと思いながらお話を伺いました。各関係性を書き出してみると理想的な関係性はモスグリーンであることが明白ですが、実践となると非常に難しいからです。

人を指示して動かすことは簡単ですが、心で動かすのは難しい。

これが難しい理由の一つに教師のマインドセットが邪魔してしまうというのが挙げられると思います。

「教師たるものこうあるべき」思考が邪魔をするんです。

 

「教師たるものこうあるべき」という何でも知っている万能者から「伴走者」へ

 

学校の多くが、オレンジの関係を保っていると思います。つまり、教師が生徒を統治するという関係性。でもこれって「何でも知っている万能者」から「伴走者」というマインドセットに変えることで、かなり楽になるはずなんですね。

先日参加したEdutopiaのプロジェクト型学習に関するセミナーでも話がありました。プロジェクト型学習が効果がある理由は、平等のパートナーとして生徒たちと伴走するからなのだと。

 

生徒:先生、ここはどうしてこうなるんですか? 先生:良いところに気づいたね。一緒に調べよう!

生徒:先生、こうしたいんですが… 先生:一緒にやってみよう!

 

例え知っていることでも良いのです。「一緒に!」という姿勢が重要です。

 

どの教科でも同じだと思いますが「何でも知っている万能者」、もしくは「教師たるものこうあるべき」思考に陥ると、指導がきつくなると考えます。

 

英語であれば、正直、輪をかけてキツイことになると考えています。知らないことがあっても仕方がないのに、「知らない」と言えない。発音が上手に出来ないことを恥ずかしく思ってしまう…

 

私はよく生徒たちに原寸大の自分を見せることが大事とであるとお話します。意見を求める、アイディアを募る、アドバイスを求める、こういったところはもちろん、さらに小さなところで言うならば、お礼を言ったり、謝ったり… こんなほんの小さなことであっても少しやってみると、子どもたちが開花するということはよくあること。

 

江藤先生もそういった部分を大事にしていらっしゃるのだとか。そういった事を続けていくうちに、自然な流れとしてモスグリーンの学級経営につながっていくのだと改めて感じました。

 

ほおっておいてはいけない生徒のマインドセット

 

では、生徒のマインドセットはどうすれば良いのか? これは結構おざなりにされている印象を受けている部分ですが、実は重要で整えてあげる必要があると考えています。

キケン度大!ゴーレム効果

 

ゴーレム効果とは教育心理学における心理的行動の1つで、否定されることによって学習者の成績が下がることです。

指導してきた生徒たちの中には「自分たちはバカ」と公言している生徒たちも大勢いました。もちろんこのマインドセットでは成績は上がりません。

 

心理学者のバンデューラが1995年、自己肯定感が学習に与える影響の研究結果としても発表しているのですが、「自分は出来る」と思えば行動する確率は高まり、「自分には無理」と思えば行動は起こりにくくなってしまう。

 

そこで私は子どもたちに「出来る」と夢を語りました。そして彼らを「否定をしなかった」んです。

 

そうすると、自分たちで考えて国際活動を始めた生徒たちが出てきたり、募金活動を始める生徒たちが出てきたりしたのです。江藤先生も「子どもたちが自由に羽ばたき始めた」とおっしゃっていましたが、まさにその表現通りで、子どもたちのマインドセットを整えてあげると、自分たちの存在意義を考え始め、行動に移せるようになるのです。

言い換えると、「子どもたちの可能性を信じる」ということなのかもしれません。

マインドセットで学習効果にも違いを出す!

 

江藤先生のお話の中で「江藤先生のクラスと他のクラスの差は何なのか」と言われたことがあるとおっしゃっていたのが興味深いと思ったのですが、この違いこそがまさにこのマインドセットだったのだろうと思います。

子どもであれ嫌なことは嫌ですし、強制には反発が起きるわけで… これは子どもだけではなく、大人にも同じことが言えますよね。でも指導している時には忘れてしまいがちです。

 

その点を考えると、子どもたちに決定権を与える、声を上げさせる自由を与えるということがどれだけ重要なのかと感じずにはいられません。

 

学習方法を決定させる、探求したい課題を選択させる、創り出す物を決定させる…

プロジェクト型学習ではStudents' Voice and Choiceと言われる部分です。認めてもらえるからこそ、自主的に動こうと思えたり、また挑戦しようと思える… このマインドセットは非常に重要であり、このマインドセットを持たせてこそ学習効果が期待できるのだと思います。

 

江藤先生とお話して改めて感じたのは、教師の仕事は教科指導をすることだけではないということ。

教師の大事な仕事、そしてその魅力を再確認させていただいた時間となりました。

 

 

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